■今回取り上げる話
今回取り上げるのは、ウルトラセブン「史上最大の侵略(後編)」である。
この作品は、単なる地球防衛軍と宇宙人との最終決戦を描いたエピソードではない。
ここで描かれているのは、
「国際的なウソ」
である。
国際政治では、ときに国家や指導者が、
・時間稼ぎ・戦力準備・相手の欺瞞・戦争回避
などのため、意図的に虚偽を用いる場合が存在する。
そして時には、外交交渉そのものが、戦争遂行の一部として利用される場合もあるのである。
『史上最大の侵略』からは、そうした問題を見ることができる。
■今回のテーマ
国際政治では、国家や指導者が、必ずしも本当の意図をそのまま語るとは限らない。
時には、
・交渉を有利に進めるため・戦力準備の時間を稼ぐため・敵を油断させるため・戦争回避を試みるため
などの理由から、意図的に虚偽や欺瞞が用いられる場合が存在する。
国際政治学者 ジョン・J・ミアシャイマー は、国家が安全保障や国益のために、
「国際的なウソ」
を用いる場合があることを論じている。
つまり国際政治では、単純な「正直さ」だけではなく、
「相手へ何を見せ、何を隠すか」
も重要となるのである。
また外交交渉とは、必ずしも純粋な和平努力だけではない。
時には、交渉そのものが、
・時間稼ぎ・戦力再編・戦争準備
の一部として利用される場合も存在する。
そして、こうした問題はウルトラセブンにも描かれている。
■ストーリー
ゴース星人は地球侵略を開始し、世界各地へ円盤群を送り込む。
圧倒的戦力の前に、地球防衛軍は劣勢へ追い込まれていく。
そんな中、地球防衛軍長官は、ゴース星人に対し、
「現在、各国代表による国際会議を開いている」
と説明する。
しかし実際には、そのような本格的国際会議は存在していなかった。
これは、地球側が防衛準備を進めるための時間稼ぎであった。
つまり長官は、単なる交渉を行っていたのではない。
交渉そのものを利用しながら、地球防衛のための猶予を作り出そうとしていたのである。
やがてウルトラ警備隊とセブンは、ゴース星人との最終決戦へ挑む。
そして地球は、侵略の危機を乗り越えていくのであった。
■現実世界の話
このような問題は、現実世界の国際政治でも見ることができる。
冷戦期には、アメリカとソ連が、水面下でさまざまな駆け引きを行いながら外交交渉を進めていた。
たとえばキューバ危機では、全面核戦争を回避するため、互いに本当の軍事的意図を完全には明かさないまま交渉が行われている。
また外交交渉そのものが、戦力準備や時間稼ぎとして利用される場合も少なくない。
つまり国際政治では、単純な「正直な対話」だけではなく、
「何を隠し、何を見せるのか」
という駆け引きもまた重要なのである。
■この話の意味
『史上最大の侵略』からは、
「国際的なウソ」
を見ることができる。
この回で重要なのは、地球防衛軍長官の虚偽が、単なる私的な嘘ではない点にある。
それは、地球防衛のための、戦略的な虚偽なのである。
長官は、国際会議が進んでいるように見せかけることで、ゴース星人の判断を遅らせ、地球側へ時間的猶予を生み出そうとしていた。
つまり描かれているのは、単なる宇宙人との戦いではない。
それは、
「外交と欺瞞もまた、安全保障の一部である」
という問題なのである。
『史上最大の侵略』は、戦争において、交渉や言葉そのものが戦略として利用されることを描いた作品として見ることもできるのである。