二度侵略されたノンマルト
― 先住民追放の構造から読む『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」
■今回取り上げる話
今回取り上げるのは、『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」である。
この回は、ウルトラシリーズの中でも特に重いテーマを扱った作品として知られている。
怪獣や宇宙人との戦いを描く通常のエピソードとは異なり、ここで描かれるのは、地球人自身の行為に対する問いである。
『ノンマルトの使者』が提示するのは、侵略という問題である。
しかもそれは、すでに終わった過去の侵略ではない。
侵略が、再び始まろうとする瞬間である。
■今回のテーマ
侵略という出来事は、しばしば「土地を奪う」という一度の行為として理解される。
しかし歴史を見れば、侵略はそれで終わるとは限らない。
先住民が追放され、侵略が完了したかに見えたあとでも、
資源の発見や開発の必要を理由に、残された土地さえ再び奪われることがある。
つまり侵略とは、単発の出来事ではなく、
形を変えながら繰り返される構造を持っている。
『ノンマルトの使者』は、この構造を非常に明確な形で描いた作品である。
■ストーリー
地球にとって「海底」は、宇宙と並ぶ重要な開拓地である。
その開発を進めていた海底開発センターのシーホース号が爆破される。
それは、海底に住むノンマルトの仕業であった。
そこから、地球人――具体的にはウルトラ警備隊――とノンマルトの紛争が始まる。
そこへ、謎の少年が地球防衛軍基地に通告してくる。
「海底はノンマルトのものだから手を出すな」
少年はそう警告する。
「ノンマルト」
ダンの説明によれば、M78星雲ではこの言葉は「地球人」を意味する。
つまり、ノンマルトこそが本来の地球人であり、われわれが地球人と呼んでいる存在は、実は宇宙からやって来た侵略者の子孫だったのである。
その侵略者によって、ノンマルトは海底へと追いやられていた。
しかし、地球人による侵略はそれで終わったわけではなかった。
海底という新たな開拓地を求めて、地球人は再びノンマルトの領域へと踏み込もうとしていたのである。
『ノンマルトの使者』が描いているのは、過去の侵略ではない。
侵略が、いままさに再び始まろうとしている瞬間である。
そしてそれは、歴史の中で繰り返されてきた侵略の姿でもある。
侵略は、決して一度では終わらないのである。
■現実世界の話
さて、このようにしてアメリカ大陸への侵略者たちは、先住民の土地を次々と奪っていき、最後には荒涼とした砂漠ばかりの利用価値のない地域を「インディアン保留地」として与え、そこへ押し込めた。
これだけならば、過去の歴史として語られる出来事である。
ところが後になって、この「利用価値がない」と思われていたインディアン保留地が、実はウランなどの資源の宝庫であることがわかった。
すると政府は、先住民に残されていた最後の権利さえも取り上げてしまおうとする。
つまり、侵略はそこで終わったのではなかった。
むしろ、形を変えて再び始まったのである。
このように、一度追放された先住民が、後になって再び土地や資源を奪われる例は、歴史の中にいくつも存在する。
事例
年代
侵略主体
奪われたもの
構造
インディアン保留地の再収奪
20世紀
アメリカ政府
ウランなど地下資源
追放された先住民の土地を資源開発のため再利用
ブラックヒルズ問題
1870年代〜
アメリカ政府
金鉱
条約で保障された土地を資源発見後に奪取
パレスチナ問題
20世紀〜現在
イスラエル国家
土地・居住権
段階的入植と領域拡張
チャゴス諸島追放
1960年代
英国政府
島の居住地
軍事基地建設のため住民を強制移住
これらの事例に共通しているのは、侵略が一度の出来事として終わらない点である。
先住民を追放したあと、資源の発見や開発の必要を理由に、残された土地さえも再び奪われていく。
侵略は終わったように見えて、形を変えて繰り返されるのである。
■この話の意味
この視点から見ると、『ノンマルトの使者』が描いている状況の意味も理解しやすくなる。
ノンマルトは、すでに一度地球から追放されている。
海底へと押し込められ、地球人の世界から姿を消した存在である。
しかし地球人は、海底という新しい開拓地を求めて、再びノンマルトの領域へと踏み込もうとしていた。
つまりこれは、第二の侵略である。
『ノンマルトの使者』が描いているのは、怪獣との戦いではない。
それは、
侵略がどのように繰り返されるのか
という問題なのである。
そしてこの物語が示しているのは、きわめて単純な事実である。
侵略は、一度では終わらない。
 
 
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