■今回取り上げる話

今回取り上げるのは、ウルトラマン「侵略者を撃て」である。
これまで見てきたように、国家や集団はしばしば、
・生存
・安全保障
・文明の維持
といった利益を守るために行動する。
その中でも特に深刻な対立を引き起こしやすいのが、
「領土問題」
である。
領土問題は、単なる土地の取り合いではない。
そこには、
・生存空間
・資源
・安全保障
・歴史的権利
などが関係している。
そのため、交渉による解決が難しく、武力衝突へ発展する場合も少なくない。
『侵略者を撃て』からは、そうした問題を連想させる部分を見ることができる。

■今回のテーマ

領土問題について考えたとき、すぐに思い出される存在の一つがバルタン星人である。
バルタン星人は、単なる「侵略宇宙人」として描かれているわけではない。
彼らは、核実験によって母星を失った「宇宙の難民」であった。
生き残った者たちは、新たな居住地を求めて宇宙をさまよい、偶然たどり着いた地球への移住を望むようになる。
つまりこの問題は、見方によっては、
「地球の領有」
をめぐる問題として見ることもできる。
国際政治学者R・マンデルは、
・問題となっている領土が当事者の居住地に近いほど
・領土獲得を狙う側が強大であるほど
領土問題は武力化しやすいと論じている。
また、国家や集団は、単に生存だけではなく、
「自分たちの支配領域を確保したい」
という欲求から行動する場合もある。
こうした考え方は、バルタン星人の行動とも重なる部分がある。

■ストーリー

バルタン星人は、ある狂った科学者の行った核実験によって母星を失ってしまった。
宇宙旅行中であった者たちだけが生き残り、生存可能な星を探して宇宙を漂流していた。
そして偶然たどり着いたのが地球であった。
彼らは、地球が自分たちの生存に適した環境であることを知り、移住を望むようになる。
作中において、ハヤタは条件次第ではバルタン星人の地球移住も不可能ではないという姿勢を見せている。
つまりこの時点では、全面戦争以外の選択肢も存在していた。
もし単純な土地問題だけであれば、何らかの妥協点を見いだせた可能性もあったように見える。
しかし結果として、交渉は決裂し、地球とバルタン星人は武力衝突へと進んでいく。

■バルタン星人の論理

では、なぜ交渉は成立しなかったのであろうか。
地球人とバルタン星人は、単に「別の国」の住民ではない。
生まれ育った星そのものが異なる。
これは、
・文化
・価値観
・社会構造
・生物的性質
そのものが異なる可能性を意味している。
現実の国際政治においても、
・民族
・宗教
・イデオロギー
・言語
などの違いは、対立を複雑化させる要因となる。
もっとも、作中では言語の問題はある程度解決されていた。
バルタン星人は、人間の脳を利用することで地球語を理解し、会話を行う能力を持っていたからである。
また、宗教や思想の違いが直接的な対立要因として描かれていたわけでもない。
では、何が問題だったのであろうか。
我々は、
「能力格差」
が重要な要因だったのではないかと考えている。
バルタン星人は、地球人を大きく上回る科学力と能力を持っていた。
その優位性が、
「共存する」
のではなく、
「支配する」
という発想を生み出した可能性がある。
もし自分たちの方が圧倒的に優れていると考えれば、対等な共存ではなく、相手を従わせようとする発想が生まれやすい。
そして、その意識こそが、平和的解決を困難にしたのではないかと思われる。

■現実世界の話

このような問題は、現実の国際政治でも見られる。
領土問題は、単なる土地の境界線をめぐる争いではない。
そこには、
・安全保障
・生存空間
・歴史的権利
・民族問題
などが複雑に絡み合っている。
また、移民や難民の問題においても、
「共存できるのか」
という不安が対立を深刻化させる場合がある。
さらに、圧倒的な力を持つ側が、
「自分たちの方が優れている」
と考え始めたとき、対等な共存よりも支配を選択する危険も生まれる。
その結果、交渉ではなく武力による解決が選択される場合もあるのである。

■この話の意味

こうして考えると、「侵略者を撃て」が描いているものも見えてくる。
もちろん、この作品は基本的には、
「地球侵略を企む宇宙人」
との戦いを描いたエピソードである。
しかしその一方で、
「異なる集団同士は共存できるのか」
「領土問題はなぜ武力化するのか」
という問題を連想させる部分も存在している。
バルタン星人は、母星を失った難民でもあった。
しかし同時に、圧倒的な科学力を背景に、地球を支配しようともしていた。
『侵略者を撃て』は、
領土問題や生存の問題は、単純な善悪だけでは整理できない
ということを考えさせてくれる作品なのかもしれない。
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