2026年4月29日、2001年に放送された『仮面ライダーアギト』の25年後を描いた映画『アギト-超能力戦争-』が公開された。『アギト』は5年ほど前に初めて視聴したため「あの頃のヒーローが帰ってくる!」といった同窓会的な期待感は薄かったのだが、TV本編の壮大な世界観から地続きであることと、いつもの周年映画とは気合の入り方が違う様子が予告編から感じられたため、こちらもいつもより気合を入れて劇場へ向かった。
映画を見終わった第一の感想は、「TVシリーズから映画までで一つにつながった、人間の進化と真価を問う『アギト』という神話を見たような気分」だった。
TV本編では、実は神によって万物が創られていた、という創造論的な世界観で、神から分かれた光の力が神に抗って人間にもたらした、無限に進化する力=アギトを巡る戦いを描いている。神は人間を超えた存在であるアギトの力を憎み、アギトに覚醒しうる人間を親族ごと天使に殺させ、根絶やしにしようとした。
当初、人間側は神の意図など知る由もなく、正体不明の怪物・アンノウンから“人間”を守るため、アギトに覚醒した津上翔一、ギルスという不完全な覚醒をしてしまった葦原涼、警察の対アンノウン装備・G3を装着する氷川誠などが戦った。
最終的に、翔一たちは神に勝利し、神はアギトを滅ぼすことをやめて見守ることを宣言する。しかし、それは「いずれアギトを恐れた人間の手によってアギトが滅ぼされるだろう」との考えもあってのことだった。
それから25年、『アギト-超能力戦争-』の世界では、超能力に目覚めた者たちが次々と人間を殺戮していく。その黒幕は、TV本編でアギト覚醒者として登場し、最終的に翔一たちと共に戦って死んだはずの木野薫。ギルスの遺体から抽出したアギト因子で人間をギル・アギト(新種のアギト)へと変え、ギル・アギトたちに人間を襲わせた。ギル・アギトが活動するとアギト因子が放出され、襲われた人々もアギト因子に感染する。感染者は適性があれば覚醒し、なければ全身が壊死していく。これを続けることで、人間をアギトという種へと進化させようとした。
今作の主人公は、25年前にG3の装着者だった氷川誠。超能力者による殺人事件に巻き込まれ、殺人犯として服役していたが、脱獄して新たな装備・仮面ライダーG7を装着しギル・アギトと戦う。
TV本編と今作では、方向性こそ正反対であるものの、どちらも進化を軸に「人間のあるべき姿」を押し付け、そうでないものを排除しようとするものとの戦いが描かれている。
TV本編では、「人間は進化せず人間のままであるべきだ」とする神に対し、アギト覚醒者の津上翔一を主人公に据え、アギトになっても力に振り回されることなく人間・津上翔一として日常を生き、そのうえでアギトとして人間を守る姿を描くことで、人間の進化の可能性を示した。
一方、今作では「人間はより優れた種へ進化すべきだ」とする木野一派に対し、ただの人間である氷川誠を主人公として、進化そのものではなく、その過程にこそ人間の真価があることを示している。
木野一派との戦いにおいて、氷川は新たな装備・G7システムを装着する。その性能はG6以前の装備とは一線を画し、ギル・アギトにも互角以上に渡り合う代物だが、強さの本質は別の部分にある。
氷川は無実を信じる仲間たちによって脱獄し、戦闘中はG7開発者・小沢澄子の遠隔操作によるバックアップを受け、最後の自爆覚悟の特攻は氷川を慕う超能力者に救われる。何度も困難に立ち向かい積み重ねた信頼が、氷川の強さを支えているのだ。これは、理由もなく蘇り、あっさり寝返った者のせいで窮地に陥り、用済みになった仲間を食らって利用した木野一派とは対照的である。
また、ラストでは氷川や脱獄に関わった(超能力者を含む)仲間たちが揃って警察に自首する。人類を救った英雄たちだが、英雄ではなく社会に生きる人間として、清々しい表情で法の裁きを受ける。コントのような雰囲気で演出されているが、独善的な理由で裁きを下そうとした神や木野たちへのアンチテーゼとして、これほど真摯で痛快な答えはないだろう。
他者によって造られようが、力を授けられようが関係ない。自分の足で前へ進み、自分を省み、自分のままで変わることこそが、人間の進化であり真価なのだ。
今作は、歴代仮面ライダーをベースとした新規作品のレーベル「THE
KAMENRIDER CHRONICLE」の第1弾として製作されている。これまでの周年映画よりも数を絞って予算をかけ、リブート(キャスト・世界観一新?)も視野に入れているとのこと。今作では、懐かしのキャストが集まることがピークになるのではなく、『アギト』のテーマをより深く、新たな角度で描く作品作りがなされていた。第2弾以降も、過去作の新たな魅力が見られるチャレンジングな作品を期待したい。
KAMENRIDER CHRONICLE」の第1弾として製作されている。これまでの周年映画よりも数を絞って予算をかけ、リブート(キャスト・世界観一新?)も視野に入れているとのこと。今作では、懐かしのキャストが集まることがピークになるのではなく、『アギト』のテーマをより深く、新たな角度で描く作品作りがなされていた。第2弾以降も、過去作の新たな魅力が見られるチャレンジングな作品を期待したい。