仮面ライダーシリーズには、オリジナルの言語がいくつか存在する。
……とは言っても、実際のところは“言語”ではなく、日本語をベースに一定のルールで文字を入れ替えた暗号のようなものである。
しかし、文字の入れ替え方や作中での扱われ方の違いによって、それぞれがただの暗号に留まらない個性を持っている。

不気味で面白い! グロンギ語

 今回紹介するのは、『仮面ライダークウガ』に登場する怪人、グロンギが使用する「グロンギ語」である。
グロンギとは:超古代に存在した民族。怪人に変身する力を手に入れて他の民族を襲っていた。同様に変身能力を手に入れた戦士・クウガに封印されたが、時が経って現代で封印が解かれ、再び人を殺すゲーム、ゲゲルを始める。(現代では未確認生命体と呼ばれる)

特徴①:濁音の多さ

日本語をベースとして、一部の子音を別のものに置き換えているのだが、そのほとんどが濁音になっている。具体的には、あ~ら行のうちグロンギ語でも清音なのは「ま行」「ら行」のみ(それぞれ「ら行」「さ行」に変化)。
反対に「ぱ行」は「ま行」に置き換わっているが、発話中に登場する頻度を考えればほとんど濁音と言っても過言ではない。
濁音が生む効果①:野蛮さの演出
「カラカラ→ガラガラ」「トントン→ドンドン」のように、言葉は濁音になると強そうに聞こえる。これが発する言葉すべてに起こり、ただ喋っているだけでも暴力的な雰囲気を感じさせる。
一方で、番組後半ではより強いグロンギたちが登場し、グロンギ語を流暢に喋ったり、ほとんど日本語しか喋らなかったりするようになる。序盤のグロンギの野蛮さに対して、スマートで格が高く見えるのも面白いポイントだ。
濁音が生む効果②:絶妙な解読の難しさ
子音置き換えの結果、発音の重複が多数発生している。
あ・さ・が行→が行
は・ざ・だ行→ざ行 など
そのため、法則自体はシンプルだが、置き換えるだけでは音が確定できず、前後の文脈から類推するしかない部分も出てくる。
おかげで、あえて解読しようとしなければ「実はほとんど日本語と同じ」という現実に気付かず作品の世界観を楽しめる。
反対に、解読したい人にとっては、法則の単純さに気づいても、まだ文脈を読み解く楽しみがある。
ヒロイン・沢渡桜子が考古学的見地から謎を解明していくように、視聴者も考察に参加できるのだ。

 特徴②:数字の数え方

先述の通り、基本的には日本語の子音を入れ替えただけのシンプルなルールでできているが、グロンギ語独自のルールも存在する。
中でも代表的なのが、数の数え方だ。
グロンギ語には数字が1~9しかなく、9進法に似たルールで数を数える。
例えば、78はバギングゲギドドギブグとなるのだが、分解すると以下のようになっている。
バギン(9)/グ(×)/ゲギド(8)/ド(+)/ギブグ(6)
(9×8+6)
もっと大きい数、例えば780だと、
バギン(9)/グ(×)/バギン(9)/グ(×)/バギン(9)/グ(×)/パパン(1)/ド(+)/バギン(9)/グ(×)/ズガギ(5)/ド(+)/ギブグ(6)
(9×9×9×1+9×5+6)
となる。
9の累乗(9×9×…)で位を表現するため、9の直後には×のみが来るようにして聞き間違いを防いでいる。9の後に数字を加えたい場合、×1を挟んでから加えるルールになっている。
9進法がグロンギにとって都合がいいのかは分からないが、超古代の民族だから0の概念がなくて1~9を用いている、というのはなんとなく納得感がある。
それに、グロンギがゲゲルを始める前に、殺人ノルマ数を「バギングバギング……」と呪文のように告げられるため、未知の民族の儀式を見ているような気分になる。(実際、彼らにとってゲゲルは儀式的な側面もあるらしい)

おわりに

グロンギ語の独特な発音や数の数え方は、姿は人と似ているのに分かり合えそうにない、グロンギの不気味な異質さを感じさせる。
グロンギの解読法を知った後でも、あえて何を言っているのか聞き取ろうとせず、グロンギ語のもつ不気味さをそのまま味わって見てみるのも、グロンギをリアルに感じられておすすめだ。
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