■今回取り上げる話


今回取り上げるのは、ウルトラセブン「プロジェクト・ブルー」である。
これまで見てきたように、国家はしばしば、
・生存
・安全保障
・文明の維持
といった利益を守るために行動する。
しかし国家は、それだけではなく、
「国家の威信」
「国際社会での発言権」
を重視する場合もある。
つまり国家は、単に生き残るためだけではなく、
「自分たちが強国として認められること」
「優位な地位を維持すること」
そのものを重視することがあるのである。
『プロジェクト・ブルー』からは、そうした問題を連想させる部分を見ることができる。
■今回のテーマ
国際政治学者J・ガルトゥングは、
「経済力や軍事力に比べて、国際社会での地位や発言権が低い国は、その不満から攻撃的行動を起こしやすい」
という考え方を示している。
つまり、
「自分たちはもっと強いはずだ」
「もっと発言権を持つべきだ」
という不満が、対立や戦争につながることがあるのである。
一方、国際政治学者H・J・モーゲンソーは、国家は単に生存だけを求めるのではなく、「権力」を追求する存在であると論じている。
そのため国家は、
・国際社会における優位
・強国としての威信
・支配的地位の維持
を重視する場合がある。
また強国は、将来自らの地位を脅かす可能性を持つ存在を警戒し、その力が大きくなる前に抑え込もうとすることがある。
こうした考え方は、『プロジェクト・ブルー』に登場するバド星人の行動とも重なる部分がある。
■ストーリー
地球防衛軍は、「プロジェクト・ブルー」によって、地球と月の間に磁力線バリアを張り巡らせていた。
そこへ、バド星人の円盤が引っかかる。
バド星人は、自らを「宇宙の帝王」と名乗っていた。
そして、自分たち以外の知的生命体の存在を認めなかった。
彼らは、かつて冥王星を滅ぼしており、今度は地球を爆破しようとしていたのである。
ここで重要なのは、バド星人が単に資源を奪おうとしていたわけではないという点である。
彼らは、
「自分たち以外に、有力な文明が存在すること」
そのものを認めようとしていなかった。
つまり彼らは、
「宇宙の帝王としての支配的地位」
を維持しようとしていたのである。
■バド星人の論理
ガルトゥングの理論では、
「力を持ちながら、それに見合った地位を得られない国」
が攻撃的になるとされている。
しかし、バド星人の場合は少し違う。
彼らは、すでに圧倒的な軍事力と支配的地位を持っていた。
だからこそ、
「将来、自分たちの地位を脅かす存在」
を早いうちに排除しようとしていたようにも見える。
地球のような新しい文明が成長し、将来、自分たちと対等な存在になることを警戒していたのである。
その意味では、バド星人の行動は、モーゲンソーが論じた
「強国が支配的地位を維持しようとする論理」
とも重なる部分がある。
■現実世界の話
このような問題は、現実の国際政治でも見られる。
たとえば、ベトナム戦争に対するアメリカの介入について、モーゲンソーは強く批判していた。
モーゲンソーは、ベトナムはアメリカの生存そのものに直結する地域ではないにもかかわらず、アメリカが
「超大国としての威信」
「反共陣営の指導的地位」
を守ろうとして介入を拡大していると考えたのである。
つまり国家は、
「生き残るため」
だけではなく、
「強国としての地位を維持するため」
にも争うことがあるのである。
■この話の意味
こうして考えると、「プロジェクト・ブルー」が描いているものも見えてくる。
もちろん、この作品は基本的には、
「宇宙の帝王を名乗る悪の宇宙人」
との戦いを描いたエピソードである。
しかしその一方で、
「強大な力を持つ存在が、自らの地位を守るために他者を排除しようとする」
という国際政治的構造を連想させる部分も存在している。
バド星人は、自らを「宇宙の帝王」と考えていた。
そのため、自分たち以外の知的生命体を認めなかった。
『プロジェクト・ブルー』は、
国家は、生存だけでなく、
威信や支配的地位の維持のためにも争うことがある
ということを考えさせてくれる作品なのかもしれない。
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