メフィラス星人の侵略の方法 ― 侵略の構造から読む『ウルトラマン』第33話「禁じられた言葉」
■今回のテーマ
今回取り上げるのは、『ウルトラマン』第33話「禁じられた言葉」である。
この回に登場するメフィラス星人は、ウルトラシリーズの中でも特に印象的な侵略者として知られている。
彼は強大な力を持ちながらも、武力による侵略を選ばない。
彼は強大な力を持ちながらも、武力による侵略を選ばない。
あくまで「合法的」に地球を手に入れようとするのである。
一見すると奇妙な方法である。
しかしよく見ると、そこには侵略の非常に現実的な構造が描かれている。
しかしよく見ると、そこには侵略の非常に現実的な構造が描かれている。
■ストーリー
航空ショーの最中、ハヤタ隊員とフジ隊員、そしてフジの弟サトルは突然消息を絶つ。
彼らを拉致したのは、紳士を自称する宇宙人メフィラス星人である。
彼は武力による侵略を望まない。あくまで「合法的」に地球を手に入れようとする。
彼は武力による侵略を望まない。あくまで「合法的」に地球を手に入れようとする。
そこで彼は、子どもであるサトルに対し、次の一言を言わせようとする。
「地球をあなたにあげます」
この言葉である。
メフィラス星人の理屈では、地球人自身が地球を譲ったのであれば、それは侵略ではない。
地球は地球人の意思によって譲渡されたことになる。
地球は地球人の意思によって譲渡されたことになる。
つまり彼が求めていたのは、武力ではなく
地球人自身の承諾という形式であった。
地球人自身の承諾という形式であった。
そのために彼は、フジ隊員を巨大化させて街を破壊させ、恐怖の中でその言葉を言わせようとする。
しかしサトル少年は、最後までその言葉を口にしない。
メフィラス星人は力で奪うのではなく、あくまで「承諾」を得ようとしていた。
だからこそ、その一言が得られない以上、侵略は成立しない。
だからこそ、その一言が得られない以上、侵略は成立しない。
ウルトラマンとの戦いは決着を見ないまま終わるが、メフィラス星人は撤退する。
その理由は、サトル少年が屈しなかったことにあった。
その理由は、サトル少年が屈しなかったことにあった。
侵略を完成させるために必要だったのは、武力ではなく、
奪われる側の言葉だったのである。
奪われる側の言葉だったのである。
■現実世界の話
この構図は、アメリカ大陸における侵略の方法を想起させる。
アメリカ大陸の植民地化は、単純な武力征服だけによって進められたわけではない。
むしろ多くの場合、条約や契約といった形式を通じて土地の取得が正当化された。
むしろ多くの場合、条約や契約といった形式を通じて土地の取得が正当化された。
第一の方法は、部族の指導者に対する圧力と誘惑である。
武力で全面的に奪えば反撃を招く。
武力で全面的に奪えば反撃を招く。
そこで酋長に対し、脅迫あるいは私的利益の供与を通じて「契約」を結ばせる。
共有地は部族全体の合意なく譲渡されるが、侵略者は契約書を盾に合法性を主張する。
共有地は部族全体の合意なく譲渡されるが、侵略者は契約書を盾に合法性を主張する。
第二の方法は、指導者のすげ替えである。
従わない酋長を排除し、従順な人物をかいらい酋長として擁立する。
そしてその人物との契約によって土地を取得する。
抵抗が起きれば、最終的には軍事力によって鎮圧される。
従わない酋長を排除し、従順な人物をかいらい酋長として擁立する。
そしてその人物との契約によって土地を取得する。
抵抗が起きれば、最終的には軍事力によって鎮圧される。
第三の方法は、隣接する部族との契約を利用するやり方である。
すでに屈した指導者との合意を根拠に、別の部族の土地までも取得したと主張する。
ここでも形式上の合法性が盾となる。
すでに屈した指導者との合意を根拠に、別の部族の土地までも取得したと主張する。
ここでも形式上の合法性が盾となる。
いずれの場合も、武力だけが侵略の手段ではない。
脅迫、誘惑、契約、代理権力――それらを組み合わせた巧妙な構造がある。
脅迫、誘惑、契約、代理権力――それらを組み合わせた巧妙な構造がある。
サトルは、まさに“かいらい酋長”にされようとしていたのである。
近代以降の国際政治においても、外部勢力が現地の支配者や政府を前面に立て、形式上の合法性を装いながら支配を進めた例は数多く存在する。
政治学では、このような支配の方法を間接統治あるいは傀儡政権と呼ぶ。
| 政権 |
成立 |
外部勢力 |
名目的な統治者 |
実態 |
| 満洲国 |
1932–1945 |
日本 |
溥儀 |
日本の軍事力を背景に成立。外交・軍事の実権は日本が掌握 |
| 南京国民政府 |
1940–1945 |
日本 |
汪兆銘 |
日本占領地域を統治する協力政権 |
| ヴィシー政権 |
1940–1944 |
ドイツ |
ペタン |
ドイツ占領下で成立した協力政権 |
| クヴィスリング政権 |
1942–1945 |
ドイツ |
クヴィスリング |
ドイツ占領統治を補助 |
| 南ベトナム政権 |
1955–1975 |
アメリカ |
ジエムほか |
米国の軍事・政治支援に依存 |
| 北キプロス |
1983– |
トルコ |
北キプロス政府 |
トルコ軍の駐留のもとで成立 |
| 南オセチア |
2008– |
ロシア |
南オセチア政府 |
ロシア軍の支援に依存 |
| アブハジア |
2008– |
ロシア |
アブハジア政府 |
ロシア軍の支援に依存 |
| ドネツク人民共和国 |
2014– |
ロシア |
地域政府 |
ロシア支援で成立 |
| ルガンスク人民共和国 |
2014– |
ロシア |
地域政府 |
ロシア支援で成立 |
これらの事例に共通しているのは、外部勢力が直接支配するのではなく、現地の指導者や政治家を前面に立てることで、支配をあたかも合法的なものに見せかけた点である。
■この話の意味
この視点から見ると、メフィラス星人が地球を手に入れようとした方法の意味も理解しやすくなる。
彼は地球を武力で奪おうとしたのではない。
あくまで地球人自身の承諾という形式を作ろうとしたのである。
あくまで地球人自身の承諾という形式を作ろうとしたのである。
もしサトル少年が
「地球をあなたにあげます」
と言ってしまえば、その瞬間、侵略は成立する。
「地球をあなたにあげます」
と言ってしまえば、その瞬間、侵略は成立する。
メフィラス星人は地球を奪ったのではなく、
地球人から合法的に譲り受けたと主張することができるからである。
地球人から合法的に譲り受けたと主張することができるからである。
だからこそ彼は、最後までその言葉を言わせようとした。
しかしサトル少年は、それを拒んだ。
その一言が発せられなかったことで、侵略は成立しなかった。
その一言が発せられなかったことで、侵略は成立しなかった。
『禁じられた言葉』が描いているのは、単なる怪獣退治の物語ではない。
それは、
侵略がどのような方法で行われるのか
という問題を、非常に明確な形で示した寓話なのである。
侵略がどのような方法で行われるのか
という問題を、非常に明確な形で示した寓話なのである。