仮面ライダーゼッツが最終回を迎えた。1年間視聴して感じたことを、思うままに書いていこうと思う。

作品全体の感想

仮面ライダーゼッツは、「諦めなければ夢は叶う!」の「諦めなければ」を全力で伝えてくれた作品だった。
最初は、「現実では普通の好青年(自称)だが、夢の中では無敵のエージェント」という設定に、現実離れしたクールさが売りのヒーローなんだなと思っていた。しかし、実際は「普通の好青年」が根っこにあるところが大事だった。
追い詰められ粛清される予知夢を見ても、仲間を頼って情報共有する。かつての敵と対話して戦いを回避する。最強フォームのアイテムを20年かけて作り、その能力も状況を打開できるまで繰り返す根性勝負に挑むというもの。そうした泥臭く諦めないところが、このヒーローの魅力になっていった。
今作では、人々の深層心理にある恐怖を象徴する怪人・ナイトメアだけでなく、様々な形で悪夢(絶望や諦め)が描かれていた。復讐のため、自罰のために力を使う2人のライダー。自身の存在を否定するヒロイン。それに対して、ゼッツが出す答えはいつもシンプルだ。ずばり「夢は悪夢を超える」。
そんな綺麗事を……と思ってしまうこともある。最後の敵・オブリビオンゴアナイトメアも、夢なんて叶わないことの方が圧倒的で、忘れてしまった方が幸せだと言っていた。しかし、ずっと諦めず戦い続けているゼッツを見ていると、夢が叶うか叶わないかではなく、諦めずに夢へ進み続けることが大事なことのように思えてくる。きっと、そうしているうちにいつか悪夢を超えられるのだろう。
ちょっとピュアすぎるメッセージも、普通の好青年・万津莫のおかげで素直に受け取れた。いい作品だったな……としみじみ感じているし、最後の最後、莫が現実に目覚めることができて、本当に嬉しかった。映画〜目覚めの間を描くというファイナルステージがとても楽しみだ。

バイクってやっぱりいいじゃん!

実は、仮面ライダーにハマったのが遅めで、「ライダー」と言いつつほとんどバイクに乗っていないのが当たり前の感覚だった。バイクへの憧れもなく、「ライダーはバイクに乗ってこそ」のような古参ファンの意見にはあまりピンと来なかった。
しかし、ゼッツはバイクがよく映り、よく乗る。変形してゼロのロボットとして活動する場面もあり、とても愛着が沸いた。最近のライダーにしては珍しく、終盤までほとんど他のライダーと共闘することなく孤独に戦っていたのも、1人で現場に駆け付けるバイク乗りのヒーローとしてばっちり決まっていた。
一方で、ヒロイン・ねむと2人乗りしているシーンは、ライダー同士とも違う独特の相棒感があり、それもまた印象的だった。
 

それぞれの家族の関係性

莫と美浪、ゼロと莫、ザ・レディとねむ。それぞれの家族の関係性がどれも面白かった。
莫と美浪
莫と美浪は、実は血が繋がっていないと分かる。それでも、本当の兄妹以上に互いを信頼しあっていた。何気ない日常を大切に共有しているところがよかった。ヒーロー過ぎる精神性の莫にとって、美浪は現実に繋ぎとめてくれる存在だった。ねむが夢のヒロインとすれば、美浪は現実のヒロインと言っていいだろう。
莫が現実に戻って来られなくなることを告げ、最後の戦いへ赴くシーンがある。美浪は莫を笑顔で送り出した。しかしその直後、「行ってほしくない」と泣き出してしまった。本当につらかったし、美浪と同じく悲しい気持ちになった。
先日公開された映画では、「人知れず夢の中で戦い続けるヒーロー・ゼッツ」として完結することが示唆されていた。当時は、そうなれば仮面ライダーらしくてカッコいいと思っていた。しかし、最終回のラストシーン(映画より後の時間軸)で莫は現実に戻ってきた。それが本当に嬉しかった。ヒーローとしてのカッコいいラストより、普通の好青年としてのハッピーエンドを喜べた。美浪の兄を想う気持ちに共感した部分が大きかったな、と感じている。
ゼロと莫
ゼロは、親としてとにかく不器用だった。どうしようもない人だな……と呆れつつ、その愛と期待の大きさにじわっと心を動かされた。
莫を幼少期から他者に預け、親子であることをずっと伏せていた。それなのに、ある時には莫を呼び出してバイクに乗せてあげたりする。莫への愛と期待は、そのまま悪夢となって莫の生命を脅かしもした。息子の力を利用しようとする父親、と言えばライダーによくいる悪役っぽい。しかしゼロには、なんだか憎めない人間臭さがあった。
莫がゼッツになる日を夢見て、秘密基地を作り、バイクを整備していたゼロ。それなのに、予知夢での出来事を受けて早々に基地を締め出され、敵意を向けられることになってしまった。その後は少しずつ信頼を回復して味方になる。しかし結局、親子としても、司令官とエージェントとしても、ともに時間を過ごすことはほとんどなく、散った。
莫にとって、ゼロはいい親かそうでないか……以前に、親ですらなかった。それでも、親心はちゃんとあったんだよ、と莫に言ってあげたくなる。どうしようもなく不器用で、大きな愛と夢を持った人だった。
ザ・レディとねむ
ザ・レディとねむの関係には、レディの狂気的とも言える執着と、その先でたどり着いた温かな親子愛に胸を打たれた。
レディは、自身に宿る幻影の悪夢から生まれたねむを守るため、組織を離反した。20年間も眠らずに娘を見守り、組織壊滅のため暗躍していた。親子として過ごした時間はなく、レディの一方通行な親心で20年間ねむを守り続けていた形だ。
しかし最終的には、幻影ではなく現実のねむの幸せを信じてゼッツに託し、命懸けで幻影の悪夢を倒した。その死の間際、ねむを自身のもとへ導き、短いながら親子としての穏やかな時間を過ごすことができた。レディの20年間の戦いがようやく報われた瞬間だ。ずっと敵キャラとして見ていたのに、感情移入してぐっと来てしまった。
ある意味ではハッピーエンドを迎えたわけで、これでめでたしと思っていた。しかし最終回では、その先が描かれた。ねむが見る夢の中で2人が再会し、親子水入らずで旅行を楽しんでいる様子が映されたのだ。現実を生きられるようになったねむの夢の中で、レディの夢見た親子の時間が叶った。「ゼッツ」全体でも、夢が叶ったエピソードとして一番美しいものだと思う。
 

バトル・アクション

目まぐるしく舞台が変わる夢の表現が面白かった。夢だから何でもありじゃん! にならず、それぞれの能力にしっかり個性があるのもよかった。
特にイナズマプラズマがよかった。これまで様々なライダーの高速移動フォームを見てきたが、そのどれとも被らない、まさに稲妻が駆け抜けるようなスピード表現がカッコよかった。イナズマプラズマ自体もカッコいいのに、仮面ライダードォーンとの戦いでは、ドォーンが剣を避雷針にして回避していた。ロジカルかつ視覚的にもインパクトがあって痺れた。
音の演出も印象的だった。特に、ゼッツエクスドリームが夢を書き換えて巻き戻るときの音、ノクスの攻撃ヒット音が耳に残った。今では、この音がするとテンションが上がるようになっている。
 

独特なメンバー構成

今作は平均年齢が高く、主人公の味方が少ないのが特徴的だった。
テレビ本編でライダーやそれに類する姿に変身するキャラは以下の6人。
  • 仮面ライダーゼッツ:23歳
  • 仮面ライダーノクス:32歳
  • 仮面ライダードォーン:不明(俳優実年齢48歳)
  • ロードスリー:35歳
  • ロードファイブ:32歳
  • ロードシックス:23歳
極秘防衛機関のエージェントたちがメインなだけあって、近年「若手俳優の登竜門」と呼ばれることも多い仮面ライダーシリーズには珍しく、大人と大人のぶつかり合いが独特のゼッツらしい雰囲気を作っていた。さらに、ノクス・ドォーンは終盤まで味方にならない。ロード組も敵対していたり登場期間が短かったりして、同じ立場で戦ってくれる味方がおらず、孤独に戦っている印象が強かった。
主人公の周りにいるレギュラーキャラも少なかった。現実世界では、妹・美浪と、ナイトメアを追う警察・怪事課の富士見となすか。夢の世界では、ねむとゼロ。ただし、ゼロは予知夢から覚めた莫に追い出されてしまったため、後半はねむ1人だった。怪事課はミッションの協力者で、ねむは相棒かつ救う対象。莫の帰りを待つ人は美浪だけだった。
世界各国へ同時配信する仮面ライダーの1作目として、「仮面ライダーとは孤独に戦うバイクのヒーローである」と強くアピールしているように感じられた。長年のライダーファンとしては、じっくり孤独なヒーローを堪能できて面白かった。一方で、孤独なヒーローを描き続けたからこそ、最初は美浪しか待っていなかった莫の帰りを、最後はみんなで迎えたラストシーンが、ひと際感動的だった。

夢は現実を超える

莫は、「夢は現実を超える」とも言っている。
作中、最終回ではねむとレディが家族旅行を楽しんでいた。映画では、すでに亡くなっているエージェントたちが集結してもいた。現実では起こりえない再会が、夢の中では実現している。
夢の中では無敵になれるかもしれない。もう会えないあの人と会えるかもしれない。悪夢だったとしても、ゼッツが救いに来てくれるかもしれない……。ゼッツは、眠っているときに見るほうの夢にも希望を与えてくれる。
眠れないとき、希望が持てないとき。ゼッツのことを思い出すと、なんだかいい夢が見られそうな気がしてくる。そう思わせてくれる作品だった。
 
――――――――――――
大人になった今も、どうせ無理だろうと諦めた夢を引きずって、よく眠れないことがある。そんな夜にはゼッツを思い出して、いい夢が見られるようにしたいものだ。
ログイン 会員登録
あなたのコレクションを管理できる
コレクション管理 マイページ