■今回取り上げる話

今回取り上げるのは、ウルトラセブン「ノンマルトの使者」である。
この作品は、単なる海底世界との戦いを描いたエピソードではない。
ここで描かれているのは、
「領土の正当性」
という問題である。
国家や共同体は、陸地だけではなく海についても支配権を主張している。
しかし、
「なぜその土地や海を支配できるのか」
という問いに答えることは、決して簡単ではない。
「ノンマルトの使者」からは、そうした問題を見ることができる。

■今回のテーマ

領土問題というと、私たちはしばしば、
・国境線・軍事衝突・資源争奪
などを思い浮かべる。
しかし、その前提として、
「誰がその土地を支配する正当性を持つのか」
という問題が存在している。
政治哲学者マーガレット・ムーアは、領土の正当性を考える際、
・誰がそこで暮らしてきたのか
・誰が共同体を形成してきたのか
といった点が重要であると論じている。
つまり、単に現在支配しているというだけではなく、
「その土地とどのような関係を築いてきたのか」
も重要なのである。
そして、この問題はウルトラセブンにも描かれている。

■ストーリー

海底開発が進む中、海底開発センターのシーホース号が爆破される。
その事件を起こしたのは、海底に住むノンマルトであった。
そんな中、真市少年はノンマルトと接触する。
そしてノンマルトは、自分たちこそが本来の地球人であり、現在の人類は後から地球へやって来た存在だと主張する。
やがて海底基地ガイロスが出現し、地球防衛軍とノンマルトの戦いが始まる。
戦闘は激化し、最終的にノンマルトは滅びることになる。

■現実世界の話

このような問題は、現実世界の紛争でも見ることができる。
たとえばコソボ問題では、
「誰がその土地で暮らしてきたのか」
「どの共同体がその土地と強い結びつきを持つのか」
をめぐって対立が発生した。
また、イスラエル・パレスチナ問題においても、
双方が歴史的な居住や結びつきを根拠として土地への権利を主張している。
つまり領土問題とは、単なる土地の奪い合いではない。
そこには、
「その土地は誰の世界なのか」
という問題も存在しているのである。

■この話の意味

「ノンマルトの使者」からは、
「海底は誰の領土なのか」
という問題を見ることができる。
この回で重要なのは、人類側が当然のように海底を開発と支配の対象として扱っている点にある。
しかしノンマルト側から見れば、そこは自分たちが暮らしてきた世界であった。
彼らは、自分たちこそが本来の地球人であり、海底は自らの領域であると主張している。
つまり人類による海底開発は、ノンマルト側にとっては、自らの領域への侵入として映っていたのである。
もちろん、どちらの主張が正しいのかを作品は明確に示していない。
しかし本作が問いかけているのは、
「現在支配している者に、必ず領土の正当性があるのか」
という問題である。
「ノンマルトの使者」は、単なる海底世界との戦いではない。
それは、
「領土とは誰のものなのか」
「領土を支配する正当性はどこから生まれるのか」
という問題を描いた作品として見ることもできるのである。
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