■今回取り上げる話

今回取り上げるのは、ウルトラマン「侵略者を撃て」である。
この作品は、単なる宇宙人侵略を描いたエピソードではない。
ここで描かれているのは、
「武力を背景とした交渉」
である。
国際政治における交渉は、必ずしも対等な話し合いだけではない。
時には、圧倒的な軍事力や科学力を背景として、一方が他方へ要求を突きつける場合が存在する。
また逆に、武力衝突を回避するため、共存や妥協が模索される場合もある。
『侵略者を撃て』からは、そうした問題を見ることができる。

■今回のテーマ

国際政治における交渉は、必ずしも平和的な話し合いだけではない。
時には、
・軍事力
・技術力
・文明規模
などの差を背景として、一方が他方へ要求を突きつける場合が存在する。
また国家は、ときに、
「従わなければ攻撃する」
という脅威を背景として交渉を行う場合もある。
こうした交渉は、
「威圧外交」
や、
「砲艦外交」
などと呼ばれる場合がある。
政治学者 トマス・シェリング は、国家は実際に武力を行使するだけではなく、
「武力による威嚇」
によって相手の行動変更を迫ることを指摘した。
つまり交渉とは、単なる言葉のやり取りではなく、武力とも密接に結びついているのである。
そして、こうした問題はウルトラシリーズにも描かれている。

■ストーリー

バルタン星人は、故郷を失い、地球への移住を要求する。
地球人側も、ただちに武力衝突へ進んだわけではない。
そこでは、地球への移住や共存可能性をめぐる交渉が行われている。
しかし、バルタン星人は圧倒的科学力を持っており、地球側は決して対等な立場ではなかった。
つまりこの交渉は、単なる平和的対話ではなく、武力を背景とした緊張状態の中で行われていたのである。
そして最終的に交渉は決裂し、武力衝突へ発展する。
この回では、
「交渉による問題解決の限界」
が描かれているのである。

■他にも存在する「武力を背景とした交渉」

ウルトラシリーズには、こうした交渉が他にも描かれている。
『姿なき挑戦者』では、クール星人が人類へ全面降伏を要求した。
また『史上最大の侵略』では、ゴース星人が地球防衛軍基地を壊滅させた上で、一定時間内に降伏しなければ地球を爆破すると脅迫している。
これらの作品では、単なる話し合いではなく、圧倒的武力を背景とした交渉が描かれているのである。

■現実世界の話

このような問題は、現実世界の国際政治でも見ることができる。
十九世紀、欧米列強は圧倒的軍事力を背景として、アジア諸国へ不平等条約締結を迫った。
そこでは、単なる対等な話し合いが行われていたわけではない。
むしろ、軍事力の差そのものが、交渉内容を大きく左右していたのである。
また戦争末期には、圧倒的優位側が降伏条件を提示し、相手国へ服従を要求する場合も多い。
さらに現代においても、国家は軍事力や経済制裁を背景として交渉を行う場合がある。
近年のアメリカとイランの対立では、アメリカは経済制裁や軍事圧力を背景として、イランへ核開発停止などを要求してきた。
つまり交渉とは、必ずしも平等な立場で行われるものではない。
時には、武力そのものが交渉を支配するのである。

■この話の意味

『侵略者を撃て』からは、
「武力を背景とした交渉」
を見ることができる。
この回で重要なのは、地球人側が、常に対等な立場で交渉しているわけではない点にある。
バルタン星人は、地球側を圧倒する科学力を持っていた。
つまり描かれているのは、単なる宇宙人との会話ではない。
それは、
「武力と交渉が結びついた国際政治」
なのである。
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